せっかく採用した若手スタッフが
短期間で辞めてしまう…
そんな悩みを抱えている歯科医院は
少なくありません。
一方で、
「若手中心だけれど長く働いてくれている」
という医院も確実に存在します。
この違いはどこにあるのでしょうか。
実は、Z世代を中心とした若手スタッフが
長く働き続ける職場には、
共通した「考え方」と「取り組み」があります。
今回は、
若手スタッフの定着率向上のために
歯科医院が知っておくべきポイントを、
実践的な方法とともにご紹介します。
まず理解すべきなのは『世代間の価値観ギャップ』
若手スタッフの定着を考えるうえで、
最初に認識すべきなのが世代間の価値観の違いです。
ベテラン世代とZ世代の仕事観の違い
仕事観 | ベテラン世代 | Z世代 |
---|---|---|
継続性への考え方 | 我慢して続けるのが美徳 | 無理な環境なら転職も選択肢のひとつ |
職場環境への期待 | 仕事ができれば人間関係は二の次 | 居心地の良さや職場の雰囲気を重視 |
指導への期待 | 見て覚える、自分で考えて行動 | 丁寧な説明と段階的な指導を求める |
この価値観の違いを
「最近の若者は根性がない」
と片付けてしまっては、
せっかくの人材を失ってしまいます。
違いを理解し、
それに合わせたアプローチを取ることが
重要です。
最初の3か月が勝負!安心感を重視した教育体制
若手スタッフが辞める主な理由は
「人間関係のストレス」と
「自分の成長が実感できない不安」です。
特に入職から3か月間は、
技術的な成長よりも
「安心して働ける」という実感を
持ってもらうのが何より大切です。
効果的な関わり方のポイント
成長の可視化
小さな成長や改善点を見つけて、
具体的に言葉で伝える。
「昨日より手際が良くなったね」
「患者さんへの声かけが自然でした」など、
日々の変化を認めることで自信につながります。
建設的なフィードバック
ミスが起きたときは責めるのではなく、
「どうすればもっと良くなるか」を
一緒に考える姿勢を示す。
「なぜできないの?」ではなく
「次回はこうしてみましょう」という
前向きな声かけを心がけます。
感情的にならない指導
指導する側も感情をコントロールし、
冷静で建設的なコミュニケーションを
維持する。
若手スタッフは
指導者の感情の変化に敏感に反応するため、
一貫した態度が重要です。
「なんとなく働きにくい」を見逃さない職場環境づくり
Z世代は職場の雰囲気や
コミュニケーションの質に非常に敏感です。
明確な問題がなくても、
「話しかけにくい空気」や
「距離を感じる関係性」だけで
退職を検討する場合があります。
心理的安全性を高める具体的な取り組み
日常会話の機会を増やす
朝礼や休憩時間に
仕事以外の話題も取り入れ、
スタッフ同士が自然に
コミュニケーションを取れる環境を作る。
「今日の天気」や「最近のできごと」など、
軽い話題から始めるのが有効です。
感謝を伝える仕組み
「ありがとうカード」制度や
月1回の感謝タイムなど、
お互いの貢献を認め合う機会を
定期的に設ける。
小さな親切や気遣いも見逃さず、
言葉にして伝えましょう。
定期的な個別面談
院長や主任が若手スタッフと
1対1で話す時間を定期的に設け、
不安や悩みを早期にキャッチする。
月1回15分程度でも
継続すれば、信頼関係が深まります。
スタッフの定着に大切なのは『制度』よりも『関わり方』
「福利厚生の充実」や
「キャリアアップ制度の明確化」も大切ですが、
若手スタッフが「この職場で続けたい」
と感じる理由の大部分は、
日々の人間関係にあります。
若手が求める3つの実感
「見てもらえている」実感
日々の成長や努力を認識し、
適切に評価してもらえていると
感じられる。
「聞いてもらえる」実感
困ったときや相談したいときに、
真摯に話を聞いてもらえる環境がある。
「理解してもらえる」実感
自分の性格や成長ペースを理解し、
それに合わせた指導をしてもらえる。
これらの実感を得られる職場では、
給与や条件が他院より多少劣っていても、
若手スタッフは長く働き続ける傾向があります。
「辞めさせない」から「辞めたくない」歯科医院への転換
若手スタッフの早期退職を防ぐために
重要なのは、
問題を個人の資質だけに求めないことです。
「最近の若者は忍耐力がない」と
結論づけるのではなく、
職場環境とコミュニケーションの質を
見直すことから始めましょう。
- 価値観の違いを受け入れる
- 成長よりも安心感を優先する
- 小規模だからこそできることを活かす
世代間の違いを「間違い」ではなく
「特徴」として捉え、
それに適応した職場づくりを行いましょう。
技術的な成長は時間をかけて
身につけられますが、
「ここにいて良い」という安心感は
日々の積み重ねでしか生まれません。
歯科医院の多くは少人数チームです。
一人ひとりとの距離が近いという特徴を活かし、
個別性を重視したサポートを提供することで
「辞めたくない」歯科医院に近づけるでしょう。
おわりに
若手スタッフの定着は、
一朝一夕には実現できません。
しかし、価値観の違いを理解し
安心して働ける環境を提供するという基本方針を
持ち続けることで、必ず変化は現れます。
『できていないこと』よりも
『できていること』に目を向け、
一人ひとりの成長を支える。
そんな職場づくりが、
結果的に若手スタッフが
「ずっとここで働きたい」と思える
歯科医院への第一歩となるのです。
スタッフの定着は、
医院の安定的な運営と
質の高い医療サービス提供の基盤となります。
ぜひ今日から、
小さなことからでも始めてみてください。