老いていく院長とどう向き合う?歯科医療従事者が抱える「言えないモヤモヤ」の正体

最近、歯科医療従事者の方から
こんな相談を受けました。

院長が明らかに視力が落ちてきていて、
違うところを削ろうとするんです。
毎回止めるのが大変で。

伝え方も難しくて困っています。

これは、
実はどの歯科医院でも起こり得る
現場のリアル」です。

院長の「まだやれる」「自分がいなくては」
という責任感で踏ん張っているケース

珍しくありません。

一方、現場を支える歯科医療従事者は、
患者さんを守る責任と、
長年一緒に働いた院長への遠慮の間で
揺れ続けます。

その「板挟みの苦しさ」をどう整理し、
どう動くべきなのでしょうか。

目次

院長は自分で引退を決める?

多くの人が
「院長なのだから、
自分で判断して引退するだろう」と考えます。

しかし実際には、
本人が”衰え”を
正しく認識できていないことが多いのです。

視力の低下、手元のブレ、
集中力の低下。

加齢による変化は、
医療行為に直結する重大なリスクになります。

ただ、院長にとって引退は
簡単な決断ではありません。

自分の人生の大きな区切りであり、
経営者としての責任
もあります。

スタッフの雇用や患者さんへの思いなど、
複数の感情と現実が絡み合っているからです。

辞めどきの判断ほど
難しいものはないでしょう。

つまり、
院長が自分で気付くまで待つのではなく、
周囲が適切な関わり方を知り、
動く必要がある
のです。

あなたが感じている『本音』は、すべて正しい

相談してくれた方が悩んでいたのは、
次の3つでした。

  • 患者さんを守らなければいけない
  • でも院長に強く言うのは気が引ける
  • 毎回止めるのが大変

このモヤモヤ、実はすべて正しい感情です。

そして、避けられない感情でもあります。

医療現場において、
歯科医療従事者は単なる
『助手』や『補佐』ではありません。

患者さんを守るために判断する立場にいるのです。

しかし、長年の上下関係や医療現場の文化、
院長への尊敬などが、
正しい指摘を鈍らせてしまいます。

だからこそ必要なのは、
視点の切り替えです。

「どこまで言っていいか?」ではなく、
「どう言えば伝わるか?」

この発想に変えることで、
行動の糸口が見えてきます。

実際にどう動くべきか?現場で使える4つのステップ

ここからは、現場で実際に使える
現実的な関わり方についてご紹介します。

どのような場面にも通じる100%正しい方法
とは限りませんが、
参考にしていただけたらと思います。

① 1対1で伝えない

いきなり本人に「最近見えていませんよね?」
と言っても、ほぼ確実にこじれます。

院長のプライドが傷つき、
人間関係が悪化する可能性が高い
からです。

必ず複数名で、
事実ベースで話すようにしましょう。

これは院長の尊厳を守るためでもあります。

② 『医療安全』を軸に話す

「違う歯を削りかけてました」という伝え方は、
相手には攻撃に聞こえます。

患者さんの安全のために、
今の診療体制を一度見直しませんか?

と提案してみてはいかがでしょうか。

院長は責任感で動くタイプが多いため、
「患者さんを守りたいですよね」
という方向から入るのが効果的です。

③ 「代替案」をセットで提示する

視力や動作が不安な院長にとって、
一番怖いのは役割を奪われることです。

そこで、新しい役割設計を提示してみましょう。

  • 院長は治療計画や
    カウンセリングに集中する
  • 技術作業は若手ドクターが担当する
  • チェックは二人体制で行う

このように具体的な形を示すことで、
院長も受け入れやすくなります。

④ 院長の決断を「急かさない」

引退の話は突然切り出さないことが大切です。

まずは医療安全の話題から始め、
責任の分担、若手育成へと進んでいきます。

そして最終的に院長の
役割転換へとつなげていく。

このようにステップを踏み、
自然に引退へつながるレール」を
敷いていくのがベストです。

患者さんを守れるのは、現場に立つあなたです

院長は偉大な存在です。

長年積み上げてきた技術、
患者さんとの関係、歯科医院の文化

それらへの敬意は、
当然あっていいものです。

でも、患者さんの口の中を守れるのは、
実際に診療の現場に立っている
あなたたちしかいません。

「言いづらいから…」
と先延ばしにした結果、
治療ミスが起きれば、
院長自身が一番傷つきます

だからこそ、
声を上げることは攻撃ではなく、
院長にとって『最高の支援』なのです。

おわりに

老いていく院長とどう向き合うか。

その答えは、
敬意を持ちながら
医療安全を軸に冷静に対話する
これに尽きます。

モヤモヤを抱えたまま働く必要はありません。

あなたが声を上げることは、
長年一緒に働き、
歯科医院を支えてきた院長を尊重しながら、
患者さんの安全を守るための
やさしい支え
なのです。

だから、悩んで立ち止まる必要はありません。

その思いを胸に、
少しずつ現場でできる最善の関わり方を
探していってください。

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