ある日、一緒に働いていた先輩が辞めた。
引き継ぎは十分ではなく、
患者さんの担当も、細々とした雑務も、
気づけば自分のもとへと流れてくる。
「まだ経験が浅いのに……」
「ちゃんとこなせるか不安なのに……」
それでも、誰かがやらなければいけない。
だから引き受けた。
そういう経験が、
歯科医療の現場では多く見られます。
先輩の退職後に生まれる
「静かな重圧」は、
目に見えにくいぶん、
じわじわと心身を消耗させていきます。
この記事では、その重圧の正体と、
潰れないための心の守り方を整理します。
業務量だけではない、先輩退職後の重圧の正体
先輩が辞めたあとに増えるのは
業務量だけではありません。
精神的な負荷こそが、
実はより深刻な場合もあります。
- 「自分が一番上になってしまった」
という孤独感- 相談できる相手が減り、
「こんなこと聞いていいのかな」と迷うたびに、
小さな判断を一人でこなすようになる。
- 相談できる相手が減り、
- 「先輩の分まで頑張らなきゃ」
という使命感- 「自分が穴を埋めなければ」
という使命感が、
無意識のうちに芽生える。
- 「自分が穴を埋めなければ」
- 「あなたならできる」
と思われる緊張感- 慣れていない業務が増えているにもかかわらず、
周囲からは「できるスタッフ」として
見られているような感覚になる。
- 慣れていない業務が増えているにもかかわらず、
業務量の増加は目に見えますが、
こうした感情の重みは
誰にも指摘されないまま積み上がっていきます。
『引き受けすぎ』になっていませんか?
先輩が退職したあと、
残されたスタッフに起きやすいのが
引き受けすぎる状態です。
「断ったら迷惑をかける」
「自分がやらないと回らない」
「弱音を吐ける雰囲気じゃない」
こうした思考が重なると、
限界を超えても「まだ大丈夫」と
思い込もうとしてしまいます。
そして引き受けすぎた状態が長く続くと
疲労が蓄積していき、
体のサインが現れるのです。
- なんとなくやる気が出ない
- ミスが増えてきた気がする
- 出勤することが少し怖くなってきた
こうした変化を感じているなら、
すでにかなり消耗しているサインです。
見過ごさないでください。
「私がやらなければ」を、一度手放してみる
重圧を感じているとき、
頭の中には「私がやらなければ」
という言葉が無意識に居座っています。
でも、
少し立ち止まって考えてみてください。
先輩が抜けたことで生まれた業務の穴は、
本来は職場全体で対応すべき問題です。
ひとりのスタッフがすべてを背負い込むことは、
誰も求めていません。
もし、業務の穴を埋めるのを
ひとりのスタッフに押し付けているのであれば、
職場の構造を見直すべきかもしれません。
「私がやらなければ」は
責任感から来る言葉。
しかし、
それが「私がすべてやらなければ」
に変わったとき、消耗は加速します。
できることとできないことを
正直に伝えることは、
職場への裏切りではありません。
重圧と上手に付き合うための3つの考え方
① 「一時的な状態」と捉える
先輩が辞めた直後は、
業務の負担が一時的に集中します。
しかしそれはずっと続くわけではありません。
採用が進み、業務が整理され、
他のスタッフが経験を積む中で、
状況は少しずつ変わっていきます。
「今がピーク」だと認識するだけで、
気持ちにわずかな余裕が生まれるでしょう。
②「わからない」と言える相手をつくる
ひとりで抱え込まないために、
「難しい」「これはわからない」と
正直に話せる相手をつくることが大切です。
院長でも、同僚でも、
職場の外にいる友人・知人でも構いません。
「言えなかった」ではなく、
「言える場所を持つ」こと——
それが孤独を防ぐ一番の方法です。
③ 自分の負荷を『見える化』する
重圧を感じているとき、
頭の中がごちゃごちゃして、
何がしんどいのかさえ
わからなくなることがあります。
そんなときは、
今自分が抱えている業務を
紙に書き出してみてください。
このとき、
書くほどのことでもないと思うような
小さなこともすべて並べてみましょう。
そうすると
「抱えていることが多すぎる」
と客観的に見えてきます。
見えれば整理できます。
整理できれば、優先順位が生まれます。
今、踏ん張っているあなたへ
先輩が辞めたあとに
踏ん張っているあなたは、
それだけで十分すごいことをしています。
ただ、
踏ん張り続けること自体が
目的になってしまうと、
いつか自分が
「辞める側」になってしまうかもしれません。
残ることを選んだ自分を、
まず大切にしてください。
自分を守ることが、
患者さんを守ることにも、
チームを守ることにもつながっています。





